牧野富太郎が歩いた「国有林」
千本山(現・高知県馬路村)・白髪山(現・高知県本山町)への牧野博士の訪問について
植物学者・牧野富太郎博士の行動は、牧野植物園側で「牧野富太郎植物採集行動録」として整理され、その中では、千本山(現・高知県馬路村)や白髪山(現・高知県本山町)への訪問があったことを示す文献として、「高知林友」が引用されています。「高知林友」は、当時、高知営林局(四国森林管理局の前身組織)の職員の会費制度による「高知林友会」が発行していたものです。
同誌を探索し、随行した職員等による記録が残されていることを確認いたしました。
それによれば、牧野博士は昭和9年8月5日~10日に、高知営林局の招待を受け、当時の魚梁瀬営林署(※1)と本山営林署(※2)管内で指導調査を行っています。
同誌の記録からは、牧野博士が植物の採取や指導を行った旨や、職員が受けた植物指導の内容、博士に対する畏敬の念、植物を愛した牧野像を感じ取ることができます。
1魚梁瀬営林署:安芸森林管理署の前身で、現在の高知県馬路村魚梁瀬を管轄していました。
2本山営林署:嶺北森林管理署の前身で、現在の高知県大豊町、本山町、土佐町、大川村等を管轄していました。
「高知林友」
牧野博士の行程
昭和9年8月5日高知発、田野貯木場(現・高知県田野町)を経由し、魚梁瀬営林署管内の西川事業所泊
6日千本山保護林(現・高知県馬路村)で指導調査、魚梁瀬営林署管内の石仙泊
7日午前、石仙で採集・鑑定の上、午後高知へ
8日高知から本山を経由し、本山営林署管内の白髪山作業所泊
9日白髪山国有林(現・高知県本山町)で指導調査し、本山町泊
10日帰全山の植物調査を行い、高知に戻る
牧野博士の千本山・白髪山訪問に関する「高知林友」の記録
「植物学界の権威牧野博士の指導日程」 第171号(昭和9年9月)
牧野先生にお伴して(計画宮崎榊) 第172号(昭和9年10月)
森林主事講習生の実習日誌第二信 第172号(昭和9年10月)
魚梁瀬本山方面植物採取旅行(計画和田豊洲) 第173号(昭和9年11月)、第174号(昭和9年12月)
公表資料の概要
今回、「牧野富太郎が歩いた「国有林」」として資料を作成いたしました(資料は下方、「添付資料」よりご覧ください。)。この資料には、「高知林友」の記述とともに、古写真を用いています。これは、当局が所蔵し、日本森林学会の林業遺産にも選定されている「大正・昭和初期の林業関係写真」です。
博士訪問時の写真ではありません(10~20年程度前に撮影されたと推定)が、当時、牧野博士が歩いた場所の様子をイメージできる貴重な資料として、今回の資料のなかで、ご紹介しています。
また、千本山や白髪山は、希少な野生生物の生育・生息に必要な森林を保護・管理する「保護林」に指定し、管理・保全を行っています。牧野富太郎が歩いた国有林の「いま」の様子としてあわせて紹介しています。
本資料が、国民の皆様が国有林へ関心を持っていただくきっかけとなったり、地域貢献の一助となれば幸いです。
添付資料
牧野富太郎が歩いた「国有林」(PDF : 1,361KB)「植物学界の権威牧野博士の指導日程」高知林友第171号(昭和9年9月)(PDF : 834KB)
「牧野先生にお伴して(計画宮崎榊)」高知林友第172号(昭和9年10月)(PDF : 3,375KB)
お問合せ先
四国森林管理局総務課増原(電話088-821-2010)四国森林管理局企画調整課安田(電話088-821-2160)